320295 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

変なフランス人に出逢った!

                       ≪十月二日≫     -壱-

回教の国は、昼から3~4時間休むKとが多いと聞いていたので、朝早くから行動を開始することにした。
今、何時ごろだろうか?
ホテルの従業員達が、通路に置かれたベッドで、毛布一枚被ってまだ寝息を立てている。

俺「夜は冷え込むだろうに・・・。」

インドでもそうだったけど、彼らに部屋は与えられていないのだ。
考えてみると、日本でも同じだったように思う。
友人の家がホテル経営だった石垣島でも、ホテルの娘に与えられている部屋はなかった。
階段の下のわずかな空間だったり、食堂だったり、休憩室の片隅だったりしたものだ。

とにかく彼らは、眠るのに何処でも良かった。
文句は言えないのだ。
従業員がまだ眠っている横を通り、ホテルを出て、広場近くにある”Bank of Sepha”に向かう。
銀行に入る。

俺 「すみませんが・・・TCをキャッシュに替えてくれませんか?」
窓口「どのTCですか?」
俺 「これです。」

TCを差し出す。

窓口「申し訳ありません。ここでは、”Bank of America”のTCしか取り扱っていません。それでしたら、”Bank of Milli”に行ってみなさい。」

そう言うと、メモ用紙に”Bank of milli”の場所を親切に教えてくれるではないか。
”Bank of Sepha”を出て、途中”Post Office”に立ち寄り、日本への便りを出すことにした。
街を歩くと、相変わらず俺を見て振り返る。
まあ・・・こんな格好をしていれば、日本でだってジロジロ見られること請け合いなのだから、そう気にする事もないだろう。
髭は伸び放題だし、ネパールで買った金色の刺繍の入った黒い服。
クリシュナから貰った数珠を首からぶら下げて歩いているのだから・・・・。

                      *

”Bank of Milli”は、Sepha広場からちょっと離れた所にあった。
TC10㌦を両替して、Sepha広場に戻り、バス会社へ向かう。

俺 「I want to go to Turkui!Can I have a ticket?」
窓口「No!」

とにかく、よく聞き取れない。
どうもトルコ行きのバスはここではないらしい。
変な英語で何度もアタックするが、向こうも忙しそうにしていて、”No!”と言ったきり、あまり親切に話してくれない有り様なのである。

俺 「こちとら遠い日本から、わざわざイランまで来てやっているんじゃあないか。もうちっと親切にしたらどうだい!」
窓口「No!」

日本語で捲し立てても”NO!”としか言わない。
事務所内を見渡すと、確かにトルコの文字も見える。
このバスオフィスでは、国境までか、アフガニスタン方面へバスを運行させているだけかもしれない。
こう言ったバス会社が、このSepha広場地区にはいくつも並んでいる。
結構忙しいらしく、チケットを買う現地人で事務所はごった返している。

そうしたバス会社を、一軒一軒当たっている内に、とうとう見つけることが出来た。 
”ムーヘン”と言うバス会社で、トルコのエルズラムまで行くと言う。
今までのオフィスとちょっと違っていて、ガラス張りの立派なオフィスだった。
客は一人いるだけ。

Tehran~Eruzurum間、一人1000リアル(4000円)。
バスは日本にもないような、ドイツ製の立派なバスになったと思ったら、料金まで立派になってしまったようだ。
後で他の旅行者に聞いても”そんなもんだぜ!”と言う声しか返ってこなかった。
やはり物価高は、アフガニスタンとは段違いだ。
これからは、気を引き締めて、財布の紐も引き締めてかからなければならなくなったようだ。

オフィスを出るとき、テヘランの地図を手に入れることが出来た。

俺 「Give me a map、please!」
受付「NO!」
俺 「Why?」
受付「このオフィスにも、この地図一枚しかないのよ。申し訳ありませんが、たった一枚の地図をあなたに、お譲りする訳には参りません。すみませんが!」
俺 「そうですか・・・・。」

そういえば、ホテルにも地図はあったが、一枚120リアル(480円)で売られている事を思い出した。
インド、中近東に入って、この類の地図がなかなか手に入らないので困ってしまう。
俺にとっては、日記をつける為に必要なだけなのだが、観光が目的の旅行者達にとっては、小さなガイドブックや主要な街の簡単な地図は、日本で手に入れていたほうが良いかも知れない。

                       *

   エルズラムまでのチケットに1000リアルも支払った為、両替を済ませたばかりの”Bank of Milli”に再度出かけて行くはめになる。
 窓口も覚えていたらしく(それもそのはず、両替して一時間も経っていないのだからー。)、ニコニコしながら”また来た!”という顔をして、愛想が良い。

   パスポートを出そうとすると、”NO!”と言って、手のひらを見せながらウインクするではないか。
 ”さっき見せてもらったから、もう必要ありませんよ!”と言う事らしい。
 簡単にマネーチェンジを済ませて、ホテルの食堂に戻って見ると、テヘランへ入る前の山の中のドライブインで出逢った、H君が入ってきた。
 彼もまた、「アジアを歩く」を持ち歩いている一人である。

   今日からこのホテルに泊まるという事で、午後からメシェッドに向かった同室の日本人二人と入れ替わように、H君と同室になってしまったのだ。
 このH君、今まで出会った日本人旅行者の中では一番、印象が良く気持ちの良い青年である。
 何処となく、落ち着きがあると思ったら、27歳と言う事だった。

   食堂に座り、日本への便りを書いていると、素っ頓狂な日本語が聞こえてきた。

       フランス人「コンニチワ!」
       俺    「・・・・・・・?」
       フランス人「アナタ、ニッポンジンネ!ワタシ、ニホンゴト、チュウゴクゴ、スコシ、ワカリマス!イングリッシュ、ダメネ。」
       俺    「Which your country?」
       フランス人「ハハ~~ン?」
       俺    「あんた、何処の国の人間な?」

   (あ~~あ、俺まで変になってきたようだ。)

       フランス人「ワタシ、フランス。コレカラ、ニホンニ、イキマス。東京、山梨、長崎!」

   やおらバッグの中から手帳を取り出し、日本人の名刺とか写真を見せながら、”シッテマスカ?”と言うではないか。
 変な日本大好きフランス人に出会ったもんだ。
 これ以来、この宿を引き払うまで、このフランス人に付きまとわれる事になるだ。



© Rakuten Group, Inc.